- 今回は中国に工場を持つ香港企業がよく売り込みに来阪されるニット・セーター類を取り上げることにする。
- 今から約30年前より円高になり、日本工賃が高騰するまでは、日本は多量のニット・セーター類の輸出国であった。特にアメリカへ単色でプレインな編み柄のアクリル製ニットが大量に1枚の目付け何グラムという風に重量売りされていた。
- ところが、円高と工賃の高騰を期に様変わりした。今ではニット・セーター類の年間消費量の約90%は輸入品である。特にビーズ(beads)やスパンコール(sequins)や刺繍の多いセーター類は工賃の高い日本ではまったく値があわず、そういう労働集約型のものは労働力が豊富で労賃の安いアジアの国々、特に中国で目下生産されて日本へ輸入されている。
- 逆にビーズやスパンコールや刺繍のついていないベーシックでプレインなデザインのもので編み機だけで簡単にできるニット・セーター類は日本で生産した方が安くできる。機械(編み機)が優秀だからである。日本の編み機は今でも相当輸出され、世界の方々で重宝がられている。島精機の(Shima Seiki Mfg, Ltd)の“SWG”のように、縫製がまったく不要な全自動編み機もできている。
- 日本のニット・セーターのメーカーは早くから海外に目を向け、海外で技術指導したり、合弁で生産したり、独自で進出したりして生産し、日本へ逆輸入している。ニット・セーターメーカーは大企業ではなく中小企業が中心だが、メーカーだけでなく、卸屋も海外で自社工場を持っているところもあるし、合弁で生産しているところも多い。
- 日本では機械が主に仕事をしてくれるベーシックなものの生産や、他にない独自のセーター類を極く少数生産したり、海外生産品のデザイン作りや見本作製が主な仕事である。
- 日本ではニット・セーターはまだまだ防寒用という概念が強く、お洒落着という感覚は欧米に比べてまだ低いようである。だからやはり秋、冬物が中心で、春、夏物というのは量的に少ない。素材では着心地が少しかたくて悪くてもウール、アクリル、アンゴラなども好み、厚いゲージのものが好まれる。綿や絹は冷たさを連想されるためセーター類には余り使われない。暖房のよく効いた欧米のオフィスで綿や絹を使った薄手のセーターが多く使われるが、ユニフォームの多い日本ではセーターは内衣ではなく、あくまで外衣なのである。
- 日本と欧米では仕上げも異なる。日本ではニット・セーター類は少しタイトに編んであり、着るとちょうどよくなるぐらいが好まれ、セーターのすそや襟もぴちっとつまったものが好まれる。だが、着用して窮屈なものは嫌われ、着てちょうどの着心地のものでないと売れない。柄や模様もすべての点できちっと合っていないといけない。欧米では多少の編みの甘さやだらりとしたすそや襟まわり、柄のずれが許されるのとは反対で、日本は品質面で厳重・厳格である。それだけ消費者の目が厳しいのである。
- 今でも日本のニット・セーター類は次のように少量ながら輸出されている。
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数量 |
金額 |
| 1991 |
820,000枚 |
\1,508,000,000 |
| 1992 |
876,000枚 |
\1,945,000,000 |
| 1993 |
709,000枚 |
\1,655,000,000 |
| 1994 |
413,000枚 |
\1,337,000,000 |
| 1995 |
303,000枚 |
\1,194,000,000 |
| 1996(1〜10月) |
364,000枚 |
\1,209,000,000 |
主な輸出先は1991年には香港、その他、アメリカ、台湾、の順だったが、1996年(1〜10月)ではその他、香港、台湾、アメリカの順になっている。(出所:大蔵省貿易統計)
- 一方、輸出は次のように推移している。
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数量 |
金額 |
| 1992 |
131,035,000枚 |
\181,386,000,000 |
| 1993 |
151,618,000枚 |
\177,499,000,000 |
| 1994 |
222,495,000枚 |
\220,849,000,000 |
| 1995 |
222,495,000枚 |
\235,038,000,000 |
| 1996 |
246,703,000枚 |
\277,965,000,000 |
(ともに各年度、1〜10月、出所:大蔵省貿易統計)
主な輸入先は、1991年は中国、韓国、アメリカの順であったが、1996年(1〜10月)では、
| 中国から |
197,900,000枚 |
(シェア 71.3%) |
| 韓国から |
35,357,000枚 |
(シェア 14.3%) |
| ヨーロッパから |
9,657,000枚 |
(シェア 3.9%) |
| アメリカから |
5,002,000枚 |
(シェア 2.0%) |
| 台湾から |
3,040,000枚 |
(シェア 1.2%) |
| 香港から |
2,567,000枚 |
(シェア 1.1%) |
| その他から |
15,180,000枚 |
(シェア 6.2%) |
| 合計 |
246,703,000枚 |
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となり、香港からは僅か1.1%と少ないが、香港企業が注文を取り、中国から直接輸入するためと考えられる。日本のニット・セーター類の輸出関税は目下刺繍、レースを使ったもの及び、模様編みのもので16.8%その他のもので輸入が目下断然多い。
- リラ安とデザインの良さでカット・ソーのものはイタリアからの輸入が多く、多量のビーズ、スパンコール付きや刺繍の多いフル・ファッションのものは中国からの多量の輸入が目下断然多い。
- 今はベーシックな単純柄のものが流行で、20%ぐらい円安になっていることから輸入品は値が合いにくくなっている。シンプルなデザインのものは、前期のように日本で生産したほうが安くできる。
- ニット・セーター類の取扱い業者は、日本の市場にあった新材料、例えば、テンセル(Tencel)、モダール(Modall)などの開発に努力している。海外の企業と共同開発しているところもある。
- 上述の如く、ニット・セーター類の日本市場は輸入品で満杯状態で、これ以上輸入品のシェアが上がることは余り考えられない。
- 量販店は、セーター類は流行が激しいので自ら商社経由で仕入れてリスクをヘッジしている。
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